信用こそ青年の財産-エドモン・ダンテスの処世
とある本を読んで胸に刻みたい事があったのでブログに残しておく。
私の若き日、先生のもとで、種々の教材を選んで読書会が行われた。通りいっぺんの読書会ではない。一書の紙背にまで徹して、その思想を読み取り、読みきらねばならない。
先生は「書を読め、書に読まれるな」と厳しく言われ、真剣勝負のごとき熱気の会合であった。
昭和二十九年三月、『モンテ・クリスト伯』が教材となった。「ダンテスが社交界で成功した理由は何か」-この質問に、ある人は「財力である」、またある人は「知恵と雄弁の力によって勝った」などと答えた。また「根本は復讐を遂げようとする一念の力である。どのようにしたら効果的な復讐となるか、相手をよく観察し、また社交界の性質なども勉強している」と述べた者もいた。その時の先生の一言が忘れられない。
先生は、青年らしい社交のあり方を力説した。
「若い諸君は、ダンテスのような生き方をとる必要はない。二十代の青年が、敵か味方かをいちいち探り、考えているのでは純粋さがなくて私は嫌いである。青年には信用が財産である。しかも、信用を得る根本は、約束を守るということである。できないことは、はっきり断る。その代わり、いったん引き受けた約束は、何を犠牲にしても絶対に守ることだ」
人間にとって信用ほど大切なものはない。しかも信用というものは、一朝一夕に築けるものではない。それは、積むに難く、崩すに易いものだ。十年かかって積んだ信用も、いざという時のちょっとした言動で失ってしまうこともある。また、小才で表面だけ飾ったメッキは、大事な時にはげてしまう。苦難のなかを、まっしぐらに自らの信念の道を真剣に誠実に生き抜いていく人こそ、最後にあらゆる信用をかちえていくだろう。地味な、誰も見ていないような仕事であっても、それを大切にし、一歩一歩忍耐強く進んでいく不断の作業が大事である。学識も才知も、信用を土壌としてこそ、真実の力になることを忘れてはならない。
環境が悪いと嘆くことはたやすい。しかし、それを自己を磨く"鍛えの風"として、たゆまぬ努力と実践を通じ、それぞれの環境、立場において、周囲の人々の信用を勝ち取っていきたいものだ。その財産こそ、富よりも一時の功名よりも、何よりも時とともに輝く人生の宝となるにちがいない。
僕は深く考えずに行動して大きな失敗もしてきたから、目に見えないことも大事にして生きていきたい!